繁桝ができるまで — 蔵の一年と、木の麹室で続く手造りの現場
日本酒の蔵には、一年のリズムがあります。福岡県八女市で1717年から続く高橋商店——繁桝の蔵——の場合、酒造りは9月後半に始まり、翌年4月まで続きます。
この記事は、その一年と造りの現場の見取り図です。初代・高橋六郎右衛門が八女で造り酒屋を開いてから代々受け継がれ、現在は19代目の中川拓也が蔵を預かっています。
工程の背骨 — 精米から仕上げまで自社一貫
繁桝の工程は、大きく分けて原料選定、麹造り、酒母づくり、仕込み(もろみ)、搾り。精米から商品の仕上げまでを自社で一貫して行っています。
なかでも蔵が重要工程と位置づけるのが、木製の麹室で行う麹造りです。こだわりの麹造りのため、蔵人が二人で宿直して麹に付き添います。造りの体制は、製造責任者の鈴木と杜氏の堤が二人で協力し、七日間で十四名。人の手と目が届く規模を保っています。
米は、地元八女産の吟のさと、糸島産の山田錦、夢一献を中心に、一部で雄町も使います。
蔵の一年 — 初蒸しから甑倒しまで
9月の初蒸しで、蔵の一年が動き出します。11月に新酒ができると、毎年「初搾り式」。年が明ければ、地元の福島八幡宮で醸造祈願をしていただきます。そして4月の甑倒し(こしきだおし)——蒸米の道具を倒して仕舞う節目——で、その季節の酒造りが一区切りを迎えます。
節目ごとの行事は、単なる恒例ではなく、酒造りの区切りを蔵全体で確かめる時間として大切にされています。
伝統と、これからの造り
手造りを守る一方で、蔵は時代に合わせた造りにも取り組んでいます。有機JAS(オーガニック)認定を取得し、ワンヘルス認定事業者として風力発電や電気自動車の活用など、環境に配慮した酒造りを進めています。
評価も国内外から届いています。全国新酒鑑評会では金賞(平成15・18・21酒造年度)をはじめ近年も入賞を重ね、福岡国税局酒類鑑評会では2025年に「繁桝 大吟醸 しずく搾り」などが金賞。海外でも、大吟醸「箱入娘」がCATAD'ORでグレートゴールド、ミラノでプラチナ、Kura Master(フランス)で「吟のさと純米吟醸」が金賞、IWSC 2026では「繁桝 大吟醸酒粕焼酎」がゴールドを受賞しました。日常の酒から受賞酒まで、幅を持った酒造りがこの蔵の姿勢です。
造りの話を、蔵元に直接聞く
麹室のこと、今年の造りのこと、どの銘柄がどの工程から生まれるのか。読むより聞いたほうが早いことも多くあります。
この蔵には、蔵元本人が公認したオンラインの相談窓口があります。造りのことも、繁桝の選び方も、八女のことも、旅の前から聞いておけます。AIによる応答であることを明示したうえで、内容は本人の一次情報がもとになっています。無料です。
よくある質問
繁桝の酒造りはいつ行われていますか?
9月後半から翌年4月までです。9月の初蒸しに始まり、11月の新酒と初搾り式、4月の甑倒しが節目です。新年には福島八幡宮で醸造祈願をしていただいています。
どんな体制で造っていますか?
製造責任者の鈴木と杜氏の堤が協力し、七日間で十四名の体制です。木製の麹室で行う麹造りの際は、蔵人が二人で宿直します。
どんなお米を使っていますか?
八女産の吟のさと、糸島産の山田錦、夢一献を中心に、一部で雄町も使用しています。
受賞歴はありますか?
全国新酒鑑評会の金賞(平成15・18・21酒造年度)ほか近年も入賞を重ね、福岡国税局酒類鑑評会でも金賞を受賞。海外ではCATAD'ORグレートゴールド、ミラノのプラチナ、Kura Masterの金賞、IWSC 2026のゴールド(繁桝 大吟醸酒粕焼酎)などをいただいています。