白百合と池原酒造 — 石垣島で1951年から、直火釜と手作業だけで泡盛を造る小さな蔵の話

石垣島の市街地・大川に、1951年から続く小さな泡盛の蔵があります。池原酒造。造っているのは、個性の強さで知られる泡盛「白百合」です。

「白百合」という名前は、創設者の池原與吉が付けました。春先に石垣島の野原で咲く百合の花のような、清潔感や爽やかさを感じてほしい——そんな願いの込もった名前です。創業者が亡くなったあとは2代目を祖母が継ぎ、いまは3代目の池原優(1987年生まれ)が蔵を守っています。継いだのは2013年。東日本大震災をきっかけに島へUターンしたことが、家業を継ぐ転機になりました。

70年以上使う直火釜と、全工程手作業

池原酒造の造りの中心には、70年以上使い続けている直火釜があります。釜に直接火を当てて蒸留する昔ながらの製法で、効率の良いボイラー蒸留と比べると手間はかかりますが、濃い味と個性が出る。白百合の輪郭は、この釜が作っています。

工程は、洗米、麹造り、もろみ、蒸留、瓶詰、ラベル貼りまで、すべて手作業。ラベルも一枚一枚手で貼ります。添加物を使わない100%天然醸造で、あえて不純物を残す「粗濾過」により複雑な風味を残します。仕込み水は、県内でいちばん高い山・於茂登岳(おもとだけ)の水脈の軟水。麹造りに2日、もろみに2週間、蒸留までを合わせて、1本の泡盛ができるまでにはおよそ3週間かかります。

手作業にこだわる理由を、池原優はこう言います。一本一本に手間と愛情をかけること、そのものに意味がある。機械では、お客さんと思い出を作ることがやりにくいのだ、と。

「守るために壊す」— 進化する伝統

白百合の味は、濃密な土の香りとバニラのような香り。クセが強く、コアなファンが多い泡盛です。ファンは「シラユリスト」と呼ばれ、蔵と一緒にコミュニティを作っています。面白いのは、ファンから届く声の幅です。「昔のクセが恋しい」という人もいれば、「今が一番おいしい」という人もいる。守るだけでなく時代に合わせて進化させることがよい伝統継承になる、という蔵の考え方が、そのまま声に表れています。

3代目の行動原理は「守るために壊す。まずやってみよう」。戦前に使われていた希少な黒麹菌「イヌイ菌」をあえて採用し、クラウドファンディングでファンと一緒に新商品「Shirayuri inui 44」を開発しました。この挑戦は2021年、白百合イヌイがSFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)でダブルゴールド&ベストオブクラス賞を受賞するという、泡盛史上初の結果につながりました。

蔵のこれからと、話せる窓口

蔵は小さく、生産量は限られています。それでも「小規模だからこそできる品質管理と独自性」を強みに、泡盛を世界に広めたい、島に人を呼べる蔵になりたい、と3代目は考えています。

そしてこの蔵には、旅の前から蔵元本人の話を聞ける窓口があります。蔵元本人が公認したオンラインの相談窓口で、白百合の選び方も、蔵のことも、石垣島のことも聞けます。AIによる応答であることを明示したうえで、内容は本人の一次情報がもとになっています。無料です。

よくある質問

池原酒造はいつ創業しましたか?

1951年創業です。創設者の池原與吉から、2代目の祖母、3代目の池原優(2013年継承)へと、家族3代で受け継がれています。

白百合はどんな味の泡盛ですか?

濃密な土の香りとバニラのような香りが特徴で、クセが強く、コアなファンが多い泡盛です。熟成や飲み方によってまろやかにも楽しめます。

直火蒸留はふつうの蒸留と何が違いますか?

釜に直接火を当てて蒸留する伝統製法で、池原酒造では70年以上同じ釜を使っています。効率的なボイラー蒸留と比べ、濃い味と個性が出るのが特徴です。

受賞歴はありますか?

2021年に「白百合イヌイ」がSFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)でダブルゴールド&ベストオブクラス賞を受賞しました。泡盛史上初です。